EDMという言葉が世に広まって、おおよそ10年が経過します。その間に多くのジャンルが生まれ、分岐し、いくつかは消えていきました。
ここではその中でも特に多くのフォロワーから支持されているジャンルを9つピックアップして、おすすめの楽曲紹介をしつつその特徴を解説していきます。
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Big Room House
特徴
別名 Main Room House で、いわゆる大箱映えする、ピークタイムDJ御用達の楽曲ジャンルです。「十分に長いビルドアップでテンションをあげ、ピークでドロップし、フロアをハードヒットする」というのが典型的なビッグルームハウスの構造になります。
フロアを最高潮にわかせるのが目的なので、かなり広いスタイル・サブジャンルを包括した言葉であり、世界的に知名度の高いプロデューサーが多く、最も層が厚い音楽ジャンルの1つです。
BPM
BPM 126~128
代表的アーティスト
- Devid guetta
- Tiesto
- Nicky Romero
- Martin Garrix
おすすめの楽曲
Martin Garrix, Matisse & Sadko feat. Michel Zitron – Hold On
David Guetta & MORTEN – Detroit 3 AM
Future House
特徴
多層にシンセサイザーを重ねたサウンドと、どちらかといえばスナッピーなバウンス・キャッチ―なメロディを特徴とし、そこにピッチ加工されたポップなボーカルチョップが未来的な雰囲気を添えます。
2020年の今、旬のジャンルの一つであり、若手プロデューサーが多く、ピークタイムでも通用するテンションの高いものから、比較的おさえたものまで幅広いラインナップがあります。
なお、類似ジャンルとして特にベースサウンドの質感と厚みにこだわった Future Bounce も同じく人気があります。
BPM
BPM 124~126
代表的アーティスト
- Oliver Heldens
- Don Diablo
- Tchami
- Retrovision
おすすめの楽曲
Don Diablo – We Are Love
Oliver Heldens & Lenno – This Groove
Future Bass
特徴
BPM 65~90前後とゆっくりながら、ビルドアップとドロップのテンションのギャップなど、そのメリハリの良さと未来的なシンセサウンドから、多くのDJ/プロデューサーに受け入れられました。
ドラムスの構造から4つ打ち系楽曲よりも音が密集しにくい曲調であるため、比較的ゆとりをもって、ベースのロングトーン・分厚い上物シンセ、太いドラムパーツを投入でき、他のジャンルの楽曲よりも大きめでワイドなスペースを体感できるサウンドを特徴としています。
Future House と同様、こちらも好んでボーカルチョップが多用されます。
BPM
BPM 65~90
代表的アーティスト
- Griffin
- The Chainsmokers
- NOTD
- Mashmello
おすすめの楽曲
Gryffin & Slander – All You Need To Know ft. Calle Lehmann
The Chainsmokers, ILLENIUM – Takeaway
Dubstep
特徴
BPM140前後で、比較的テンポの近い Future bass とはサウンドとグルーブの質がおおきく異なります。
ドロップの多くはワンコードで、サチュレーターやディストーションで増幅された、ひじょうに濃密な倍音と、うなるような Wobble、ノイジーなシンセサウンドを特徴としており、目まぐるしく移り変わるエディットで多くのフォロワーを獲得しました。
消えたエレクトロ系の類似ジャンルに Complextro(Complex Electro)というものがありましたが、この Dubstep は今でも健在です。
BPM
BPM 135~145
代表的アーティスト
- Skrillex
- Virtual Riot
- Datsik
おすすめの楽曲
Virtual Riot – Evil Gameboy
Skrillex – Fuji Opener
Brazilian Bass
特徴
2016年前後に発生した、出現してからそこまで時間がたってないエレクトロ系のジャンルの1つで、スナッピーで分厚いベースサウンドと跳ねるようなバウンスに特徴があります。
Future House / Future Bounce と親和性が高く、濃密なベースサウンドにキャッチ―なシンセ・ボーカルをフィーチャーしたものもあり、ディープなものからポップなものまで、そのラインナップには幅があります。
南米では以前からエレクトロを愛好する独自のマーケットが存在し、それがこのような独特なジャンルを生み出したのではないかと推測されます。
BPM
BPM 120~126
代表的アーティスト
- Alok
- Cat Dealers
- Dubdogz
- Cheat Codes
おすすめの楽曲
Alok & Sevenn – Symphonia
Cat Dealers, MAKJ – Rewind
Tech House
特徴
メロディックな要素が少なく、裏拍を刻むオープンハイハットを基軸とするグルーブとレペティティブ(反復の多い)なエディットで横方向のフローを特徴とするジャンルです。オーディエンスを躍らせることを主目的にしていますが、キャッチ―でないわけではありません。
テンションは抑えめのが曲が多く、古参のプロデューサーが長く活動する一方、今までのテックの垣根を超えたサウンドも生まれてきています。
BPM
BPM 124~128
代表的アーティスト
- Chris Lake
- Fisher
- Joris Voorn
- Mark Knight
おすすめの楽曲
Chris Lake & Solardo
Joris Voorn – Too Little Too Late (ft. Underworld)
Tropical House
特徴
EDMが電子音で作られたダンスミュージックを意味するなら、このトロピカルハウスもその1つに含めてしまってもいいでしょう。
ピアノ・アコギ・フルート等のアコースティック系楽器と、倍音の少ないマイルドなシンセを中心とし、ゆったりとした奥行きのあるサウンドが特徴です。ディープハウスと親和性の高いジャンルで、両者を足して二で割ったようなスタイルが Deep Chill と呼ばれることがあります。
2018年ごろまで世界的な流行を見ましたが、2020年の今ではトレンドのピークは過ぎた感があります。
BPM
BPM 100~120
代表的アーティスト
- Kygo
- Matoma
- Sam Feldt
- Robin Schulz
おすすめの楽曲
Sam Feldt ft. Jake Reese – Blackbird
Kygo – Carry Me ft. Julia Michaels
Deep House
特徴
以前、ディープハウスは比較的ニッチなジャンルでしたが、その後多様なサウンドの変遷を経て、今ではメジャーなダンスミュージックの1ジャンルとなりました。
メロウな雰囲気をベースとしたグルーブは R&B 系アーティストと高い親和性をもち、いくつかはビッグルームに匹敵するほどの支持を得て、世界的メガヒットとなることも珍しくありません。
上物シンセを分厚く束ねるようなことはせず、どちらかといえばベースサウンドの質感・厚さにこだわった楽曲であることが多く、音数もおさえめであることが特徴となっています。
BPM
BPM 110~125
代表的アーティスト
- Meduza
- Gorgon City
- Jonas Blue
- EDX
おすすめの楽曲
Meduza, Becky Hill, Goodboys – Lose Control
Techno
特徴
その長い歴史から多くのスタイルの変遷と分岐を経て今に至る、とても息の長いジャンルで、今日では無機質でインダストリアルなサウンドと濃密なサブベースのおりなす、ダークなグルーブを特徴とします。
楽曲の多くがクラブでの用途を前提にしており、他のジャンルのように、リスニング用途に耐えうるようなキャッチ―なメロディがあまり存在しません。そのためか安易にトレンドを追いかけるプロデューサーは少なく、職人のごとく変わらぬグルーブを生みだすプロデューサーと、それを根強く支持するファンが存在するジャンルでもあります。
BPM
BPM 126~130
代表的アーティスト
- Umek
- Adam Beyer
- Alan Fitzpatrick
- Wehbba
おすすめの楽曲
Anomalies in Heart Rate
Adam Beyer | Tomorrowland Belgium 2018
まとめ
以上、EDMのジャンルについて詳しく見ていきました。
人によっては
EDM = Big Room・Future House・Dubstep / Electro
とその周辺部分という狭い範囲でとらえる人もいますが、
- Future House のような Tech House
- Tech House のような Deep House
- Progressive House のような Techno
- Dubstep のような Future Bass
など、ジャンルの垣根を超えたクロスオーバーな楽曲も多く存在して EDM という言葉のカバーする範囲は想像以上に広い、というのが実感です。
一方でこのようなジャンル分けは、トレンドをカテゴライズしたり分析したりする上で便利な目安となりますが、本来それ以上でも以下でもありません。
楽曲制作者の視点で見れば、流行のジャンルは「無視しちゃいけないけど、あまり固執しすぎない」そういった柔軟な姿勢で音楽を楽しんでいけたらと思います。