デジタルミキサーの決定版 Yamaha 01v96 を使う人に知ってほしいことまとめ

  • 2021年12月16日
  • 2021年12月18日
  • 機材

先日、新品購入から15年間所有していた、Yamaha 01v96を中古市場に売却しました。

購入した2000年代中頃、まだ世間ではYamaha 02Rが現役で使われていた時期。

01v96はまさにちっちゃい02Rとでも言うべきコンパクトな躯体ながら、当時からひじょうに柔軟なパッチ・ルーティングと多機能性で鳴らしていたエントリー向け名デジタルミキサーです。

さらば愛しの01v96

そのDNAは最新モデル01v96iに引き継がれ、ほぼ同じビジュアルと性能をキープしつつ、トータル十数年に亘ってデジミキ市場をにぎわせます。

今ではタッチパネル式のデジタルミキサーが主流ですが、この01v96は現在も中古市場で頻繁に取引されている模様。

そうとう古い型にもかかわらず、現役稼働できるポテンシャルを今も維持する、01v96がいかに完成されたデジタルミキサーだったかが伺えます。

この記事では


  • 01v96を初めて使う
  • 01v96の性能とパッチ・ルーティングについて知りたい
  • 01v96の経年劣化について知りたい
  • 01v96の詳細な仕様について知りたい

といった方向けに、01v96の性能・パッチ方法等について説明しています。

尚、おおまかな仕様・操作は後継機の 01v96i も同じです。こちらのユーザーの方も参考になるかと思います。

前半は概要説明なので、手っ取り早く本題について知りたい方は、目次よりジャンプして下さい。

01v96とは

最初に01v96で出来ること、性能等について説明します。

01v96とは

引用元:https://en.audiofanzine.com/digital-mixer/yamaha/01V96-VCM/

以下、取り扱い説明書より抜粋。

01V96 はコンパクトなサイズながら、24 ビット/ 96kHz のクオリティで 40 チャンネルの同時ミキシングが可能なデジタルコンソールです。マルチトラック録音から、2 チャンネルへのミックスダウン、最新のサラウンドプロダクションまで、さまざまなニーズに対応します。

01v96は、2003年リリースのYamaha製国産デジタルミキサーです。

成人男性一人で運べるサイズ(540mm×450mm×150mm)&重量(15kg)のコンパクトさながら、取り扱うチャンネル数(計40ch)の多さとルーティングの柔軟さで鳴らした名機。

スタジオ用途からPA用途まで多種多様なシチュエーションに対応し、Adat 経由でインターフェースと接続することで、96KHzフルデジタルで作業を完結することもできます。

01v96で出来ること

通常アナログミキサーであれば、入力とフェーダーは一体で扱われますが、01v96はデジタルで内部制御しているため、入力を好きなフェーダーにアサインしたり、複数のフェーダーに割り振ったりできます。同一の信号を複数の出力から出すことも可能。

アナログミキサーは入力とフェーダーが一体
引用元:https://www.thomann.de/gb/allenheath_zed14.htm

他に

ボーカル録音時、入力信号にリバーブやディレイをかけてモニターしつつ、ドライの信号だけを録音したい。また、適宜入力信号にアウトボードをインサートしたい。

ライブPAの際、プレーヤーに返すモニター音量と、サウンドシステムに送る音量を別々に管理したい。また同時に録音もしたい。

DAWから複数のトラックをパラアウト。01v内で「ドラムス」「上物」「ボーカル」等にバスで振り分けてステムミックスし、それぞれにコンプやEQで調整しつつ、適宜アウトボードをインサートして味付けしたい。

など。こういった入力信号のとりまとめ・分岐・入れ替えなどは01v96の最も得意とするところ。一言でいえば、自分の好みにカスタマイズできるミキサーです。

個人レベルのスタジオワークやPA業務であれば、ルーティングに関する需要のかなりの部分をカバーするポテンシャルがあります。

01v96のスペックとレイヤー

次に、本機のスペックについて説明します。おおまかな性能は以下のとおり。01v96は入力を受けるフェーダー・つまみのことをインプットと呼びます。


  • アナログ/デジタル入力計26ch
  • アナログ/デジタル出力計22ch
  • インプット32ch/ステレオイン4ch
  • Aux 8ch/Bus 8ch
  • チャンネルエフェクト3種(ゲート・コンプ・EQ)
  • 内蔵エフェクト7種4系統
  • DAWのフィジコンとして使える

拡張ボードを挿してアナログorデジタル入力16chを追加すれば、全インプット40chの信号を一度に扱うことが出来ます。ミニコンソールとも言うべき充実感。

4階層のレイヤーを切り替えることで、32ch分の入力(インプットレイヤー1・2)、Aux8chとバス8ch(マスターレイヤー)、さらにフィジコンとしてDAWのトラックを16ch(リモートレイヤー)、合計64chのトラックを同時にコントロールできます。

レイヤー切り替えボタン

以下はマニュアル抜粋のレイヤー概念図。

入力数・インプット数にフォーカスすると、現行のYamahaデジタルミキサーTF1とほぼ同じスペックです。

Yamaha TF1 引用元:https://kakaku.com/item/K0000865810/images/page=ka_3/

正直ここまでの入力やフェーダーを一度に扱う機会はそうそうありません。とはいえ実際に使っていて、マルチIOのインターフェース・ハード音源複数台と01v96をコンビで使っていると、けっこうチャンネルを消費するもの。

本機はエントリー用デジタルミキサーとして、必要十分なスペックを備えています。

01v96の接続例

01v96の接続に決まったルールはありませんが、ここでは弊スタジオでの接続例を紹介します。

以下はマニュアル記載の接続例。

弊スタジオでは昔、インターフェースのmotu896HDと組み合わせて、以下のような接続で使用していました。


  • Motu896HDのAdat IO(8in/8out)と01v96のIOを接続
  • Motu896HDのアナログ出力8chを01v96に入力
  • Nord Rack/Roland Fantom等の外部音源を01v96に入力
  • アウトボードをインサート端子で適宜挿入
  • 空間系のアウトボードをOmni out経由でセンド・リターン
  • 適宜マイク入力してレコーディング

DAWパラアウトの16chと外部音源をまとめ、アウトボードで処理しつつ、Adat経由でDAWに戻す、というオーソドックスなスタイルです。上のマニュアル接続例にかなり近い。

Adatデジタル接続を含むので、インターフェースと01v96でワードクロック接続。マスターはmotu896HD。

motu896HD 出力22ch/入力18chのスペック
引用元:https://www.worthpoint.com/worthopedia/motu-896hd-192k-firewire-audio-1851927856

ケーブル配線でコネクタ周辺が煩雑になるものの、01v96一台でこれらを一元的にコントロールする簡便さは格別です。ミキサーなのでフェーダーによる直感的操作のマウスいらず。

他に、ハードウェアコンプを使ったゲート&サイドチェイン、リバーブセンドの手動オートメーション、ソロ・ミュートボタンによるトラックのエディットなど、ハードウェア環境ならではのエディットアイデアが生まれるのも、01v96があればこそ。

在りし日の01v96

「マウスのエディット作業は音楽を作っている感じがしない」と感じるユーザーには、一風違った制作のテンポ感をもたらしてくれます。

01v96の音質

01v96の音質はいい意味で着色が無い、悪く言えば特徴も無いと言えます。

2000年代前半には、本機よりもグレードが上の Mackie Digital8bus というデジタルミキサーがありましたが、こちらは真空管フィールのアナログ感・温かみのある出音。

Mackie Digital8bus
引用元:https://reverb.com/p/mackie-d8b-56-input-slash-72-channel-digital-8-bus-mixer)

一方、01v96にそういった着色は一切ありません。音質にマジックはなく、あくまで機能性に着目して活用するべき機材と言えます。

もちろんミキサー卓として使うのも全く問題なく、DAW内部のミックスとは一風違った結果になります。個人的には、本機を通したミックスはクリアというかヌケが良く、嫌いではありません。

01v96のメリット・デメリット

次に、使っていて感じた01v96のメリット・デメリットについて説明します。

メリット

  • PA業務で大車輪の活躍をする
  • ヘッドアンプの品質は悪くない

PA業務で大車輪の活躍をする

当時のPA界隈での01v96の普及率はかなりのものでした。

バンドのマイク入力を01v96でまとめ、内部EQでハウリングを起こす帯域をカット、Auxからモニターの返しを送りつつ、ボーカルに空間系エフェクトをかけてサウンドシステムに出力。

リハーサル時に、出演アーティスト・バンドごとにセッティング(01vではシーンと呼ぶ)をセーブし、あとは本番でリコール&手動補正。

PA現場における 01vの典型的な活用例です。

シーンメモリーボタン(Store/recall)でシーンを管理
ユーザー定義ボタンで呼び出すのが簡便

良く使うシーンは、手元のユーザー定義ボタンにアサインし、ワンタッチでいつでもリコール可能。01vはかなりPA業務に最適化された機材、と言っていいでしょう。

ヘッドアンプの品質は悪くない

私見ですが、01v96のヘッドアンプの品質はある程度信頼がおけると感じます。

ミキサーの入力部でマイクレベルの信号をラインレベルに増幅する回路をヘッドアンプという

昔、同じボーカリストに、マイクプリSSL Alpha VHD Pre/Neumann U87の組み合わせと、01v96ヘッドアンプ/Rode NTKの組み合わせで歌ってもらう機会がありました。それぞれ別のセッションで。

後ほどその2つのテイクを丹念に聞き比べてみたところ、意外にも、01vの側が音質で大きく劣るという感じがしなかった。それどころか大きな違いをそこまで感じなかった。

SSL Alpha VHD Pre
引用元:https://www.solidstatelogic.com/products/alpha-vhd-pre

かなり前のことで、今の環境で聞けば違った評価になる可能性もあります。

ただ、ミキサーのいちヘッドアンプ風情が、一線級のマイクプリ&マイクに予想外の健闘をしたというのは、強い印象を残しました。

一般的に、ミキサーのヘッドアンプは独立したプリアンプより音質・SN比が悪く、評価は芳しくありません。

しかし01v96のそれに関しては安価なインターフェース付録のプリアンプよりずっと信頼がおける、というのが個人的な見解です。

関連情報を検索しても他に見当たらない為、あくまで私見ですが。

デメリット

  • ムービングフェーダーが脆弱
  • ディスプレイが小さくエディットがややストレス

ムービングフェーダーが脆弱

01v96の目立つ機能はやはりムービングフェーダーでしょう。しかし、本機のパーツの中でも脆弱な部類に入るかもしれません。

当方の01v96は購入から5年程度ですでに不穏な挙動があり、10年目にはいくつかのフェーダーの動作不良が顕著に、フェーダー交換見積を取るに至りました。

以下は所有していた01vのレイヤー切り替えの様子。ボタンを押してもch7と10は無反応。一見正常なフェーダーも挙動が怪しかったりします。

サポートに相談した時は、本機のフェーダー不良は珍しく無いとのこと。01vはムービングフェーダーは脆弱と言っていいでしょう。

ディスプレイが小振りでエディットがややストレス

01v96のパッチ・ルーティング・エフェクトの細かい設定などは、液晶画面内でしか行えません。

画面は小さく、ジョグダイヤルがメインの操作になるので、慣れるまではエディットがストレスに感じるかもしれません。

ダイナミクスのエディット画面。ジョグダイヤルでの数値変更は慣れるまでぎこちない

01v96の操作・パッチ・ルーティング

ここでは、本機の心臓部分である、信号を入力してから出力するまでの「パッチ・ルーティング」のやり方にフォーカスを当てて説明していきます。

ちなみにパッチ・ルーティングとは、以下で図示するシグナルフローを組み替えてカスタマイズする設定のことを言います。

01v96の操作

フロントにはフェーダー・ボタン・端子類が所狭しと並んでいますが、ざっくりと以下のような区分で配置を理解しておくと良いでしょう。

01v96のパッチ・ルーティングの設定は、「SEL」ボタンでチャンネルを選び、「Display Access」ボタンで設定を液晶に表示。

さらに液晶操作の十字キー・ジョグダイヤル・ENTERキーでの操作が基本になります。

また、Aux切り替え「Fader mode」ボタンを押すと、フェーダーがセンド量調整用に切り替わります。

01v96のシグナルフロー

次に、01v96のシグナルフローについて説明します。

シグナルフローとは音声信号の流れを意味し、上流から下流の一方通行で進みます。

以下の図は、説明書巻末のブロックダイアグラムを参考に作成したフローの概念図。

参考:01v96ブロックダイアグラム

入力信号は内部で複雑に分岐しますが、最終的には「ステレオバス(2ミックス)の出力」「ダイレクトアウト or バスの出力」「Aux経由の出力」の3系統の出力に集約されます。

また、信号の送り元・送り先は初期状態で以下のようなアサインになっています。ADはアナログ入力、Slotは別売り拡張ボード入力。

送り元送り先
AD in 16chInput 1~16ch
Adat in 8chInput 17~24ch
Slot in 8chInput 25~32ch
Stereo bus outStereo out
Bus out 8chAdat out 8ch
Aux outOmni out 4ch
内蔵エフェクトのリターンStereo in 4ch

特別なケースを除いて、基本は初期状態のままで良いでしょう。あとは周辺機器の状態に応じて適宜変更して対応。

次に、シグナルフローをカスタマイズするための、パッチ・ルーティングについて説明します。フロー図を隣に読むと理解の助けになるでしょう。

01v96のパッチ・ルーティング

パッチ・ルーティングは、「フロー上流の要素を下流の要素に送る」と言うのが基本的な考え方。

例えば「インプットをバスに送る」という方向はあっても「バスをインプットに送る」のは不可能ということ。これを理解していると「01v96で出来ること出来ないこと」がかなり理解できるでしょう。

次に、以下の順でパッチ・ルーティングのやり方を説明していきます。


  • 入力ソース➡インプット
  • インプット➡バス・ステレオバス・ダイレクトアウト
  • バス/Aux➡出力
  • ダイレクトアウト
  • バス➡ステレオバス
  • Aux➡内蔵エフェクト

入力ソース➡インプット

入力端子で受けた信号をフェーダー・つまみに送ります。

「Display Access」➡「Patch」➡「IN PATCHタブ」

でエディット画面を開きます。

「Input」「Stereo input」はフェーダー・つまみのことで、送り先を意味します。十字キーでチャンネルを選び、Enterキーで決定。

詳細画面が開くので、送り元を十字キーとジョグダイヤルで選択し「Yes」でEnterキーを押して決定。

「Yes」でEnterキーを押さないと反映されないのでご注意ください。

ちなみに「Stereo input」の送り元は内蔵エフェクトのリターン。基本ノータッチでOKです。

インプット➡バス・ステレオバス・ダイレクトアウト

フェーダー・つまみの信号をバス・ステレオバス・ダイレクトアウトの3方向に送ります。(※ステレオインつまみはダイレクトアウト送り不可)

「Display Access」➡「Pan/Routing」➡「Routing1-16 / Routing17-STI タブ」

で設定画面を開きます。

各インプットに表示されている数字1~8はBus 1~8chに相当、また「S」はステレオバス「D」はダイレクトアウトのこと。

送り先に指定する項目を十字キーで選び、Enterキーで決定。

尚、初期状態でステレオバス送りはすべてオンになっています。また下の「ダイレクトアウト」で詳述しますが、初期状態でインプット1~16chしかダイレクトアウトを送り先に指定できません。

バス/Aux➡出力

バス/Auxで受けた信号を出力端子に送ります。

「Display Access」➡「Patch」➡「Out PATCHタブ」

で設定画面を開きます。

「Slot」「Adat」「Omni」は送り先を意味します。十字キーでチャンネルを選び、Enterキーで決定。

詳細画面が開くので、送り元を十字キーとジョグダイヤルで選択し「Yes」でEnterキーを押して決定。

「Cascade out」は01v96を二台シリアル接続した際に選べる送り元で、一台では使えません。

参考:01V96 デジタルカスケードの方法

また「Insert out」は標準装備のインサート端子以外からインサート出力する場合に選ぶ送り元で、端子がそもそも無いBus・Aux・2TR・FX・Stereo out に使う機能です(※ この記事では詳述しません)。

ダイレクトアウト

ダイレクトアウトで受けた信号を出力端子に送ります。

「Display Access」➡「Patch」➡「Direct outタブ」

で設定画面を開きます。

この画面だけ他と異なり、送り元となるインプット32chに任意の送り先(出力先)をセットする体になります。

十字キーでチャンネルを選び、Enterキーで決定。詳細画面が開くので、送り先を十字キーとジョグダイヤルで選択し「Yes」でEnterキーを押して決定。

画像にある通り、ここでは初期状態で16ch分出力先がセットされています。

それゆえ「インプット➡バス・ステレオバス・ダイレクトアウト」で指定できるダイレクトアウトのチャンネル数が上限16ch。

16ch以上に増やす場合はこの画面で空欄のインプットに送り先をセットしていけばOK。

尚、ダイレクトアウトでセットした出力先はここで占有されることになり、他の送り元から送ることは出来なくなります。

ダイレクトアウトで使用中の出力は他から送ることが出来なくなる

バス➡ステレオバス

バスで受けた信号をステレオバスに送ります。

「Display Access」➡「Pan/Routing」➡「Bus to stereo タブ」

で設定画面を開きます。

  

ステレオバスに送りたいバスの「on」スイッチを選択し、EnterキーでOK。

Aux➡内蔵エフェクト

Auxで受けた信号を内蔵エフェクトに送ります。

「Display Access」➡「Patch」➡「Effectタブ」

初期状態で、Aux1~4chがそれぞれエフェクトの片方のチャンネルのみに入力されています。

センドエフェクトは通常ステレオで使用するので、ここでは各エフェクトにステレオペアのAuxを送ると良いでしょう。

設定方法は今までの説明と同じ。ここを「No assign」にすると、Auxからエフェクトへの信号をカットできます。


以上、駆け足でパッチ・ルーティングについて見てきました。01v96で知っておくべき操作は他に沢山あります。

とはいえ、核となるセッティングの操作は、本項で説明した内容です。最初はややこしいですが、上述のシグナルフローとともに頭に叩き込むことで、かなり01v96の性能を引き出すことが出来るはずです。

参考として、01v96でこだわった配線・ルーティングをしているブログ記事を貼っておきます。

参考:01V96iによるライブと録音と配信同時進行

01v96の経年劣化しやすいパーツ

01v96はすでに生産終了しています。ゆえに調達ルートは中古市場のみ、どの個体もある程度経年劣化を抱えていると言えます。

長年01v96を使っていて感じた、経年劣化しやすいと思うパーツは以下のようなもの。


  • ムービングフェーダー
  • フェーダーノブのくすみ
  • フロントの皮脂・サビ
  • コネクタ類の接触不良・ガリ
  • 入力ゲイン・パッドの感度不良
  • バッテリー

一つひとつ説明していきます。

ムービングフェーダー

デメリットの項目で言及している通り、01v96のムービングフェーダーは経年劣化が表面化しやすいパーツです。進行度合いはマチマチで、特定チャンネルの劣化が先に目立つことが多いようです。     

動作が酷い場合、交換も視野に入れるべきでしょうが、2021の今メーカーに在庫があるかは不明。仮にあっても高くつくのでコスパはかなり悪いはず。

フェーダーノブのくすみ

フェーダーノブは、年数経過に応じて色素が沈着、くすんでいきます。以下は当方の01vフェーダーノブの写真。

現役で使っている間(購入から7・8年程度)は気にも留めませんでしたが、使わなくなって数年放置している内に、急に沈着が進行した印象です。アルコールで拭いても取れません。

以下に01v96の交換用フェーダーノブへのリンクを貼っておきます。必要な方はどうぞ。また関連記事のリンクも併せて貼っておきます。

参考:YAMAHA 交換用フェーダーノブ
参考:YAMAHA 01V96のロータリーエンコーダ交換

皮脂汚れ・サビ

01v96のフロントは、頻繁に肌に接するとことで皮脂汚れが付着します。以下の写真は当方の01vの例。3/4チャンネルの部分などがそうですね。

で、それを擦ってしまうと1/2チャンネル下部のように塗装がはがれ、サビとなってしまいます。皮脂汚れに研磨はNG。

サビが露出するとかなり見苦しい

また、サイドは直接サビが発生することが多いようです。ここはまさに手を置いていた部分。

一方、直接触れない部分には購入当時のツヤがそのまま残っているのが、01v96の不思議な点。

ほとんど肌に触れない部分は新品のツヤをキープする

中古市場を覗くと、サビが広がっている個体が散見されます。

肌に触れる機会が多かったか、マスキングテープ等を貼っていたか詳細は不明ですが、何かしら接触の機会が多かったと見て良いでしょう。

01v96使用時は、ボディへのタッチは控えめに。

コネクタ類の接触不良・ガリ

接触不良やガリは音響系ハードではつきもの。01v96も同じです。

当方の01vはヘッドフォン端子とモニター端子にガリが確認されましたが、入力端子は無事でした。おそらくは入力端子に常時プラグを挿していたからだと思います。

以下の記事によると、コネクタを空の状態で放置すると、内部が酸化してガリの原因になるとのこと。

参考:YAMAHA 01V96のロータリーエンコーダ交換

ただ、未使用時もプラグ挿しっぱなしにするかどうかは微妙なところ。問題が出たら接点復活材で一時しのぎするしか無いかもしれません。

入力ゲイン・パッドの感度不良

つまみを回してもボタンを押しても反応が鈍い状態です。当方の01v96では多数の入力部で発生を確認しています。

特段雑に扱った記憶も無いので、おそらく長期間放置して自然発生した経年劣化のようです。つまみなら「グリグリ」、ボタンなら「ポチポチ」を何度も繰り返すと、ある程度感度は戻ります。

バッテリー

01v96のバッテリー切れは良くある問題、当方でも一度ありました。

以下の記事によると、01v96のバッテリーは「CR4032」ボタン電池で、PCマザーボードのバッテリー交換と同じ要領で出来るようです。

参考:01V96 バッテリー交換


以上、01v96の経年劣化しやすいパーツについて見てきました。内部基盤の故障について触れなかったので、参考記事リンクを貼っておきます。01v96iの基板交換の見積金額が確認できます。

参考:YAMAHA 01V96i の修理

01v96は2003年の機種で、既に生産終了しています。ゆえに中古市場で調達すると、何らかの不具合を抱えている可能性はあると見るべき。

中古購入するなら、月並みですが出来る限り状態が良いものを選びましょう。

仮にメーカーに依頼して修理・交換・オーバーホールが出来たとしても、高くつくのは間違いない。

結局は「状態の良い中古を選ぶ」ということに尽きます。

    

01v96の詳細な仕様

細かな仕様は以下に別表としました。マニュアルより抜粋して貼り付け。以下に、マニュアルのリンクを貼っておきます。

参考:01v96マニュアル

一般仕様

EQパラメーター

GATE/COMPパラメーター

ライブラリー

アナログ入力/出力仕様

デジタル入力/出力仕様・I/O SLOT仕様

CONTROL I/O仕様・寸法図

ブロックダイアグラム

まとめ

以上、01v96について見てきました。

再度内容をまとめると、以下のとおり。


  • 01v96はスタジオ用途・PA用途が主たる活用方法
  • 01v96は個人で使う分には十分な入出力・フェーダーがある
  • 01v96のパッチ・ルーティングはひじょうに柔軟
  • シグナルフローを理解するとパッチ・ルーティング設定が楽になる
  • 01v96の中古購入は出来るかぎり状態の良いものを選ぶ

数年放置した01v96を引っ張り出してきて使ってみると、2021年の今でもじゅうぶん現役稼働できるポテンシャルを感じました。

本機よりずっと洗練されている現役のYamaha TF1と比べても、本質的な機能は大きく異なりません。

いかに01v96が完成されたデジタルミキサーであったが改めて理解できます。また本機はデジタルミキサーの概念を理解する学習素材としてもかなり優秀。

コスパ良くスタジオを構築できて、学習効果も高い。興味のある方は以下のリンクより覗いてみてください。

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