和声学は、主に芸大や音大で音楽を学ぶ人には避けては通れない必須の科目です。私は音楽系の大学を出てはいませんが、個人的に和声を学習してみてかなりメリットが多いことに気が付きました。
和声(わせい[1]、英語: harmony)は、西洋音楽の音楽理論の用語で、和音の進行、声部の導き方(声部連結)および配置の組み合わせを指す概念である。西洋音楽では、メロディ(旋律)・リズム(律動)と共に音楽の三要素の一つとする。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E5%A3%B0
和声を学ぶ直接の目的はハーモニーの感得ですが、それだけにとどまらず、音楽をやるにあたって必要とされる基礎知識・技術の底上げと、曖昧な知識の整理も同時にケアできる効果もあると感じました。
この記事では、和声を学ぶことにより得られるメリットをご紹介させて頂きます。(音大受験の勉強法を紹介している訳ではありません。)
※この記事は約3分で読むことが出来ます。
和声を学習するメリット
私の感じた和声を学ぶメリットは、以下の4点です。
- 記譜・読譜に慣れることができる
- 楽典の内容も理解できる
- ピアノの初見演奏に効果がある
- ハーモニーの基礎が学べる
記譜・読譜に慣れる
和声は、市販の五線紙にえんぴつ・シャーペンで実際に記譜して実施するため、続けているうちに自然と記譜に慣れていきます。最初はふにゃふにゃで頼りない音玉も、やがてはメリハリのあるしっかりした音玉になっていきます。もちろん記譜のスピードもどんどん早くなります。以下私の記譜例です。
また、和声の実施中もその後の確認においても、常に楽譜とにらめっこしている状態なので、楽譜をぱっとみてその内容を理解するのがすこしずつ早く、そして正確になっていきます。
このように和声に継続して取り組んでいると、楽譜に対する苦手意識がぐっと下がり、逆に楽譜を読んだり書いたり、弾いたりするのが楽しくなっていきます。
楽典の内容も理解できる
厳密にいうと「楽典の内容を理解しておかなければいけない」という表現の方が正確です。音程・拍子に関する理解は必須で、これらの理解が曖昧な状態で、和声を学ぶことは出来ません。
和声の学習は、自動的に楽典の学習を含むことになります。
また、最初はハ長調、イ短調といったシンプルな調から、変ホ短調、ロ長調の様な調号の数が多いものまで全て網羅されているので、まんべんなく全ての調に慣れることが出来ます。
ピアノの初見演奏に効果がある
個人的にもっとも嬉しかった和声の効用で、和声を実施したら実際にそれをピアノで弾いてみて、禁則を犯していないか、秀逸な実施かどうか、野暮ったくないかどうか、などを音を聴いて確認しなくてはいけません。
途中でつっかえてスムースに弾けなかったりすると、ハーモニーの横方向の流れがつかめないので、自分の実施の良しあしが判断出来ません。
結局、和声を学ぶことは、自動的に4声部の楽譜の初見演奏の能力も求められることになります。最初はたどたどしくても、ずっと継続していくうちに、自分の実施した楽譜をぱっと見て、ぱっと弾くということに慣れるようになります。
ハーモニーの基礎が学べる
そもそもの和声の意義はこの点にあります。
勉強のポイント
以下に、和声を学ぶ上でポイントと感じた点を挙げてみました。
音大の作曲科卒業の先生につく
和声を最初から最後まで独学で進めるのは、かなり難しいです。一旦やり方が理解できたら、途中独学で進めることもできますが、先生についていると、重要な部分や巻末補遺との関連を指摘してもらえたり、実際の曲での実例を教えてくれたりするので大きな理解の助けになります。
禁則・ルールは正確に覚える
和声は、必ず避けるべき禁則と実施のためのルールがかなり細かく記述されています。理解が曖昧で記憶が定着しないままどんどん進めてしまうと、新しく出てきた項目と混同してしまったり、古い内容を忘れてしまったりするケースがひじょうに多いです。
記述されている内容の意味が分からない場合、先生に質問するなり自分なりの言葉や説明でまとめたりして、正確に理解してから進むようにしましょう。
音を頭の中で鳴らす
テキストに記述されている内容を覚えてしまい、その通りに実施すれば和声の実施は可能です。しかしそれでは、実際にどういう音が鳴っているかよくわからなくても出来てしまうことになります。
和声の本来の目的はハーモニーを感得することにあるので、出来る限り自分が実施している内容が、どういう音をしているのか、頭の中で音を鳴らしてみるように努めましょう。
内容を繰り返し何度もおさらいする
内容を覚えるコツとしては、例えば1章2章3章4章という章立てであった場合、
- 初日は1章を理解して覚える
- 二日目は1章をおさらいし、2章を理解して覚える
- 三日目は1・2章をおさらいし、3章を理解して覚える
- 四日目は1・2・3章をおさらいし、4章を理解して覚える
という風に、終わらせた項目を含めて重層的に内容をさらっていくことが効果的です。何層にも重ねて塗る、漆塗りの様なイメージで考えて頂くと良いかも知れません。上の例だと、四日目には1章を3回も見直していることになります。
おさらいにすごく時間を取られると感じますが、最初に30分かかったことが数週間後は5分程度で終わったりすることもざらにあるので、さらう内容の量に比して、感じる負荷はそこまで大きくありません。
尚、覚える場合もおさらいする場合も、紙に書き起こしながら進めることで大きな理解の助けになるでしょう。
課題の実施(黒本)を弾く
黒本には数多くの和声の実施例が記載されています。私は、既に終わらせた部分に限定してランダムに実施を選び、ひたすらピアノで弾くということを繰り返していました。
弾いていくうちに、いい実施の譜面にはあるパターンがあるということに気づき、それにより4声部の譜面を初見で弾くのがどんどん楽になっていき、それと同時に良い実施の音の響きにも慣れていくことが出来ました。
2声部・3声部で弾く
任意の2声部ないしは3声部を選び、それだけを弾くことで、4声部で感じるのとは異なったハーモニーの特徴を感じることが出来ます。
- バスとテノール
- バスとアルト
- ソプラノとテノール
- ソプラノとアルト
- ソプラノ以外
- バス以外
等でしょうか。2声部だけ弾く際に、欠けている残りの2声部がどういった音か、頭の中で音を補いながら弾くのもトレーニングになります。
ペースを決めてやる
和声を学ぶ際、大きく日があいてしまったりすると、以前の内容を思い出すだけで一苦労なので、出来る限り毎日やるようにするのが望ましいです。その場合、起床後の1時間ないしは就寝前の1時間など、決まった時間を確保してやるようにしましょう。私のケースでは、起床後1時間で内容のおさらいと和声の実施、就寝前30分で黒本の弾奏をやっていました。
まとめ
以上、私の感じる、和声を学ぶことのメリットと学ぶ際のポイントをご紹介させて頂きました。繰り返しになりますが、和声をやることで、演奏・記譜・読譜・楽典の理解・ハーモニーの感得などの、音楽の読み書きそろばんとも言うべき、基礎的技術を効率よく押さえていくことが出来ます。
興味をお持ちの方がおられましたら、ぜひトライされてはいかがでしょうか。