Splice Soundsで『使える』 ボーカルサンプルを探す方法(メリット・デメリットも)

  • 2020年5月28日
  • 2021年3月22日
  • EDM
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日頃からサンプルを調達するために Splice をよく使っていますが、とくに恩恵を感じるのはボーカルネタがそこそこ豊富である点です。

ボーカルネタは旧来のサンプルパックでも利用できましたが、Splice を使えば市場にあるパックほぼすべてを横断してソートし、地引網のようにごそっと調達することができるので非常に簡便です。また効果的なボーカルネタの活用は、間違いなく曲の品質を一段階底上げしてくれます。

この記事では、Splice でボーカルネタを調達するメリット・デメリット、そしてネタを探す際の手順とコツを解説していきます。

Splice でボーカルを調達するメリット・デメリット

メリット

Image : albersHeinemann / pixabay

コスパがとても良い

Splice のサブスクは日本円で約850円、100クレジットです。

クレジット無駄打ちを勘案するにしても、4-8小節の実用的なネタがひとつ8円(無駄打ちいれても百円程度)というのはなかなかのお値打ちです。

経験のある方は分かると思いますが、ボーカル収録はトラック作成以外にキャスティング・ソングライティング・作詞・スタジオ予約・本収録などの手間を要し、かつ歌の上手いボーカリストとなるとなかなかの経費も考慮しなくてなりません。このもろもろが缶コーヒー数本分で代替できるなら、活用しない手はないかと。

Splice はいろいろなサンプルがありますが、実際に収録すると手間と経費が掛かるものを狙い撃ってダウンロードするのが賢いといえます。

パフォーマンスがとても良い

正直音質はまちまちですが、ボーカリストのパフォーマンスは意外なほど良いです。今までかなりの数をチェックしてきましたが、方向性や歌唱スタイルで NG はあるものの、ヘタ過ぎて NG というのは一度たりとてありません。

とにかく曲が映える

ボーカルが楽曲の顔役でありメインパフォーマーなのは疑う余地がなく、その有無で曲の映えぶりがおおきく変わってきます。

また人間の声は発音特性上他のどの楽器とも音質がかぶらないので、ミックス中で埋もれるということがありません(適正音量が前提)。

またインスト指向の曲であればボーカルネタは有効なつなぎにもなり、アレンジで雰囲気を変えたい時の大きな武器になります。飾り程度でも十分効果的です。

すぐれたガイドボーカル(になりうる)

もし正式なボーカルと差し替えるなら、ボーカルネタを仕込んだミックスを相手に渡すことで、ソングライティング・作詞の良きインスピレーションになることがあります。

ボーカリストによっては詳細なガイドを喜ぶ人もいます(嫌がる場合聞かせないこと)ので、実際のサウンドを叩きに歌唱スタイル・旋律・フック・リズム・歌詞などを検討するのは言葉による誤解や勘違いを無くし、とても効率的です。(ただマネはダメ) 

デメリット

microphone

Image : Bru-nO / pixabay

外国語のみ

大きなネックといえます。

見たところ Splice のボーカルネタの大部分は英語で、日本語はおそらくありません。(Splice 以外だとあるのかも?)

ネタを使う際注意点があって、長尺を使うなら歌詞をある程度理解していないと、例えばバースとコーラスで一貫性の無い歌唱ネタをつなげてしまう可能性があります。

ネイティブリスナーに聞かせる機会を想定するとして、最低でも「別れの歌」「出会いの歌」「パリピの歌」などポジティブ or ネガティブで、歌詞の位相を合わせておくべきです。

ここがズレているとかなり滑稽なことになります。

(長尺の場合)ドンピシャのネタは少ない

これもネックの一つといえるでしょう。下記で具体的な探すコツを説明していますが、作成中の曲のテンポ・キー・曲調にドンピシャではまるボーカルネタを探すのは根気が必要です。

ショットであれば話は単純ですが、長尺でベストマッチにこだわる場合なら、周辺のテンポ・キーまでを射程にいれて後で Daw で補正することになるでしょう。

もし完璧を期するなら後のせ方式ではなく、先にボーカルネタを据えてから楽曲を作成する、先のせリミックス方式が有効です。

ほかのユーザーと被る

気になる人には気になるデメリットですが、サービス特性上やむを得ないとも言えます。

しかしながら、Splice のネタバレが露見したメジャー曲が、それによって低評価を被った例を私は知りません(ダフトパンクは別)。私はそれよりも楽曲のアイデアの方が圧倒的に重要だと考えます。

そもそも Splice が主戦場とするクラブミュージック界隈は、サンプリング、リミックスなど、よそ様のネタを料理するスタイルが流儀として定着しているので、ネタがかぶるか否かはそう大きな問題とは見做されないでしょう。

探し方の手順とコツ

splice_top

Splice ブラウザトップ

実際に Splice でボーカルサンプルを探す手順とコツについて説明します。

具体的な Splice の使い方、アプリの操作方法などはこちらの記事を参照ください。とりあえず検索窓に「vocal」と打ち込んだうえで、以下のような要領で検索結果を絞り込み、表示されるネタをチェックしていきましょう。

テンポ・キー・曲調すべてにピタリとはまるネタはかなり少ないので、手順としてはとりあえずテンポ条件 + 属性タグのみで検索結果を絞ってある程度手広く候補を拾い(キー条件はゆるめ or セットしない)、あとでDAW補正する前提で探すのがいいです。以下その前提で説明していきます。

テンポの絞り込み

私はボーカルネタを Daw で加工する際に極端なタイムストレッチを好みません。なので初回検索時は「希望テンポ±5bpm」のテンポレンジで検索するようにしています。つまり作ってる曲が 100bpm なら、95~105bpm のレンジ幅。

これで良好なネタがなければ、さらに±10bpm まで射程を拡大します。こういう感じで一通り検索結果をチェックし、芳しいネタが無ければ、「±13bpm」「±15」と少しづつテンポレンジを広げていきます。ただこうなるとどうしてもタイムストレッチする際に劣化が避けられませんが・・・。

ちなみにタイムストレッチすると劣化がきつい場合、それが是非使いたい優秀なネタであるなら、曲テンポを±3~4程度変えて(やりすぎ NG)歩み寄らせ、その分タイムストレッチ幅を狭めて劣化を抑えるのもアリです。

splice_tempo

レンジ変更時は「update」を忘れずクリック

キーの絞り込み

結論として、キーの絞り込みは上下「短三度」➡「全音」以内のキーレンジにおさえるのがベターといえます(全音以内だとなお良し)。このレンジだとDAWでピッチシフトする際に大きな劣化があまりないと感じます。➡「全音」でもピッチシフトによる劣化が若干気になる場合があります。「半音」違いあるいは「同一キー」だとベスト。

これより広いレンジでもダメではないですが、どうしてもピッチシフトで人工的な結果になります。(曲の雰囲気や加工で許容されるケースもあり)また、ややトリッキーですが平行調も場合によっては候補にいれて OK。

上でも書いているとおり、テンポとキーの両方で一気にソートすると、検索結果の絶対数が少なくなってしまうので、キー条件はゆるめ(私はそもそもキーではソートしませんが・・)、あるいは無しでその都度キーはファイル名で確認するのが良いかと。

ちなみに長尺の場合ボーカルネタが曲のコードに完全にピタッとはまるケースは相当低く、のちのちネタに合わせてコードとアレンジを見直すか、ないしは DAW(cubaseならVariAudio)でネタ側のメロディを補正することになるのは念頭においておくべきです。私はだいたい後者です。

splice_key

キーレンジフィルター / 私はほとんど使わない

参考:Cubase おてがるピッチシフト

属性の絞り込み ~ファイル名のチェックポイント~

ファイル名の内容からも絞り込めます。記載事項はおおよそ以下の通り。

【パック型式】【ジャンル】【テンポ】【属性】【歌詞】【キー】

この中でも、属性は必要なネタを探す際の大きなヒントになり、タグクラウドでも候補として表示されます。以下によくある属性用語と内容をまとめた一覧を作りましたので、必要に応じてどんどん絞り込んでいきましょう。

adlib 「アーウー」系のハミングやワンショットフレーズです。イントロやカウンターとしても使える場合があります
bridge あまり見かけない用語です。各 verse & chorus をつなぐ Cメロ的な感覚です
chant adlib に近い意味で使われる用語です
chorus いわゆるサビです。日本語での「コーラス」と意味が異なります。「chorus」と記載のあるファイルは、同一パック内にひとつながりの「verse」がある可能性もあるので、使う場合かならずチェックしましょう。ちなみにごくまれに「pre-chorus(Bメロのようなもの)」のあるネタもあります
chop Future House とかでよくあるチョップボーカルです。多くの場合フォルマントエフェクト付きで、エディットの自由度は狭いです
double いわゆるダブリングです。モノラル2トラックが左右にふってあります。モノラルが欲しい場合、片チャンネル抜き出しましょう
drone ボーカルをリバーブやディレイで長く引き伸ばした音です。ストリングス・パッド代わりに使えます
dry wet の対義語でエフェクトがかかっていない状態です。とはいえコンプがかかっているケースがかなり多いのでダイナミクス処理要注意です。特にこだわりがないかぎり、wet でなくこの dry を調達するのがセオリーです
harmony ハモリのトラックです。ほぼ間違いなくハモられるリードトラックがパック内に同梱されています。使うなら両方もっていきましょう。2つがミックスされている場合もありますが、やはり個別データがパック内にある可能性がかなり高いです
hi リードに対する上声部です。ハモリであったりオクターブユニゾンであったりします
hook 推測ですが「印象的なフレーズ」というようなあいまいな意味で、verse でも chorus でも使われる言葉です。検索結果が思わしくない時に検索タグにいれてみましょう
lo リードに対する下声部です。ハモリであったりオクターブユニゾンであったりします
long 意味はそのままで「長い」旋律のリードボーカルです。おそらく8小節程度はあると期待できます
phrase 印象的なワンセンテンスのリードボーカルです
short 上の「長い」ボーカルの逆です。こういうファイル名を付ける場合「long」「short」の両方がパック内にあることが多く、その場合 long と比較して相対的に短いという意味になります
stack 複数声部重ねてあるトラックです。これ自体使えることは少ないのですが、各声部のバラのデータがパック内にある可能性が高いので、使うなら丸ごともっていくのがポイントです
stem Stack と同じような意味で使われます
spoken 語りやラップ調のリードです
wet dry の対義語でエフェクトがかかった状態です。空間系かコーラス系のどちらかであることが多いです。加工できる余地が狭いですが、それを承知の上であればOK。
verse いわゆるAメロです。こちらもひとつながりの「chorus」がパック内に存在する可能性があるので、使うなら一連をもっていきましょう。また「verse2」のよう感じで連番がふってある場合もあります。

vocal で検索すると多くがショットや短いフレーズですので、長尺を求める場合はとりあえず verse / chorus をタグ追加するのが良いです。

その場合おススメが、良好なネタを見つけたら必ずパックを覗いてみることです。ファイル名を頼りに前後(コーラス・バース)あるいは上下(リード・ハモリ・上声部・下声部)の有無をめざとくチェックすることで、これらを芋づる式に丸ごと調達することができれば、ボーカルアレンジを検討する際にぐっとアイデアの幅が広がります(どちらかといえば無いケースの方が多いけど・・)。

ファイル名に記載がないけど、メタデータとして属性が埋め込まれているファイルも表示されます。この場合ネタを聞いた感じで内容を判断します。

なお、パックによって用語の定義がまちまちで、実際はひじょうにアバウトにこれらの単語が使用されています。上の一覧を参照しつつネタによって解釈を変えてください。(あとキーの間違いが結構おおい)

バラエティ豊かなファイル名

パックをキープ

一応ダウンロードしたファイルから元パックのリンクをたどることもできますが、気に入ったのネタの一部を「Collections」にまとめておくと、いざというときパックへのアクセスが楽です。

キープしたいパックのネタの一部をドラッグして入れておこう

アプリとブラウザの切り替えもアリ

アプリはランダム結果表示ですが、ブラウザはリリース順・人気順などで検索結果を整列可能で、検索結果を全数表示してくれるのでじっくり探したい場合に好都合です。アプリで結果が思わしくない場合ブラウザでも覗いてみましょう。

splice_browser

ブラウザのラグクラウド表示

ちなみにブラウザだとネタの尺も表示されるので、私はパック中身を覗く際に必ずチェックするようにしています。(長尺のネタを探す場合20秒以上がどのくらいあるかをざっと見ます)

秒数である程度ネタの状態が分かる

まとめ

以上、ザザッと Splice でボーカルネタを探すコツなどを見てきましたが、実際の Splice の検索表示はそこそこごちゃついており、特にアプリは洗練不足でややユーザビリティに欠けます。ベストマッチネタを欲するなら多少根くらべになってしまうとお考え下さい。

ただ楽曲にボーカルがバッチリはまると、曲のクオリティが無条件に数割増しになります。

ぜひチャレンジしてみてください。


参考:Splice Sounds レビュー ~詳細なメリット・デメリット解説~
参考:Splice Sounds の使い方を詳しく解説します(休止・解約方法も!)
参考:Splice Sounds 即戦力サンプルパック集【女性ボーカル・ギター・Serumプリセット編】
参考:Zedd/Don diablo 風ボーカルシンセ作成チュートリアル