数あるエフェクトの中でも、コンプレッサーほどラインナップが広いエフェクトはないのではないでしょうか。
使い方は人によってさまざまで、第一線のプロでもそのスタンスは千差万別で基準はあってないようなもの、といっても過言でもありません。
今回の記事では
- なんとなくコンプを使っている
- 音にパンチが出れば OK だと思っている
- 種類がいろいろあって良くわからない
といった状態の方に向けて、私が日頃から注意していること、用途や種類をとわず広く活用できそうなコンプレッサーの使い方のコツを8つピックアップしてご紹介いたします。
※ この記事は約3分で読むことができます。
1、ビフォーアフターで音量が均一になるようにする
音量が大きくなると、音が良くなったと錯覚することがあります。
なので、コンプをセットするときは、そのビフォーアフターで音量が均一に聞こえるようにアウトプットゲインを調整しつつ、適宜エフェクトのミュートスイッチをオンオフにして、不必要に音量が大きくなってないかチェックしながら作業をすすめましょう。
コンプはトランジエントにも影響し、私の感触としてリダクション量が例えば-3dBであれば、2-3割程度小さめの +2.5dB 前後のゲイン量がだいたい聞いた感じ同じくらいなると感じます。
2、複数回に分けて少しづつコンプする
一度のコンプでリダクションが大きくなるようにセットすると、聴感上の圧迫感(コンプレッション)がきつくなり過ぎてしまうことがあります。
そこで例えば同じ-6dBリダクションするにしても、2つのコンプで二段階にわけて計-6dB のリダクションにすることで、圧迫感の少ない、よりナチュラルなコンプレッションを得ることができます。
なお、同じリダクションであってもコンプの種類のよって個体差が大きいので、コンプの効き具合が自然かどうか、心地よいかどうかというのは、必ず耳で判断するのがセオリーです。
3、やりすぎない
コンプを深くかけることで得られる迫力と勢いは
ダイナミクス(音量の自然な抑揚)と音質を犠牲にして得られている
と心得ましょう。
ダイナミクスは楽器やサウンドを特徴づける重要な要素でもあるので、これが損なわれるほど、音は平板に不自然になってしまいます。
こういった状態を避けるために、いいなと思うコンプレッションの状態よりも少し抑えめにとどめておく方が、いい結果になることが多いです。
あと、小さい音でモニタリングしていると、コンプに関わらず何のエフェクトでもオーバーにかけすぎる傾向が強いので注意が必要です。
4、先に欲しい結果をイメージする
「とりあえずコンプ」という感覚で、ルーティンのように何となくコンプを挿している人はいったん手を止めて 「リリースタイムを短くし、音を手前にもってこれないかな?」など
先に欲しい結果をイメージ ➡ エフェクトをエディット ➡ 判断
という風に、欲しい結果をできるだけ先にイメージするようにしましょう。
その理由は、「こんな感じ」という欲しいサウンドをイメージし、モニターのミックスと頭のなかで重ねてからエディットに着手すると、可否の判断と見切りが格段に早くなるからです。
実際の音と欲しい音を頭のなかで比較して聞いてるわけですから、漫然と作業するよりも的確なエディット・判断が可能になるんですね。
5、ボリュームオートメーションほうが早い場合もある
コンプはものすごくかみ砕いていえば、「自動音量調整エフェクト」とも言い換えることができます。
じっくり調整して思うようなサウンドが得られなければ、フェーダーのボリュームオートメーションを直接書いてしまったほうが早いかもしれません。
音のタチを良くしたい、ヌケをよくしたい場合はアタック部分を、音を手前に、奥行き感を少し強調したい場合はリリースに相当する部分を、オートメーションでもち上げるといい訳です。サイドチェーン風の効果も出すことができます。
ただフェーダーのオートメーションはコンプと違って自由に描ける分、不用意に音量が大きく上下しやすく、奇抜な音量遷移になりやすいので、きちんと自然な聞こえ方におさまっているかどうか適宜チェックしましょう。
6、2-3つのお気に入りのコンプだけを使い込む
あれこれ沢山のコンプを使うよりも、少数のコンプに使い慣れるほうがメリットが大きいです。その理由は
いいコンプかどうかより、特徴を知り尽くしているコンプの方が役立つ
からです。
これはコンプのみならず他のエフェクト・ソフトシンセ・DAW・ハードウェア等すべての機材に共通していえることでもあります。
一般的にプロとアマのサウンドの品質差は、どこまで精密に音をアジャストできるかに集約されますが、そのためには日頃から慣れ親しんでいる機材でないとこまかな微調整に対応できません。
私は標準的な用途に Waves R-Comp を、サイドチェーン用に Fabfilter Pro-c2を使い、基本この2種類だけでまかなっています。それ以外は必要に応じてごくたまに違うコンプを使う程度です。
7、モニタリング環境の質とコンプの精度は比例する
コンプの効果は、とくに初心者のうちは、どのように音が変化しているのか?この効き方でいいのか?などその音の変化を正確に耳でキャッチするのがかなりむつかしいです。
理由の一つとして耳がなれていないからというのも当然あり、これは時間をかけて経験を積んで慣れていくしかありません。
しかし私は、モニタリング環境が整備されていないからという理由も無視できないと感じています。初心者のうちでプロ用のモニターとアコースティックが調整された環境を準備できる人は少ないからです。
適切なアコースティック調整のされた環境では、解像度が高く、「見える」「手で触れる」くらいにはっきりと音の状態を認識できるようになります。
このような環境でコンプを調整する経験を積めばあとは慣れの問題で、遅かれ早かれピンポイントで精度の高い調整ができるようになると思います。
逆に言えば、整備されていない環境だと、どれだけコンプ調整の経験を積んでも上達には限度があるということです。
8、MS処理のできるコンプを活用する
MS 処理のできるコンプを使う際は
一旦 Side を音量ゼロに ➡ Mid に強めのコンプレッション ➡ Sideの音量バランスを取り直す
という流れで活用するといいでしょう。
一般的にセンター付近の音が引き締まると、ミックス全体が安定しやすいと感じることが多いです。この場合あとで混ぜる Side の音量でさらに自然な音の広がりに調整できるので、ある意味一石二鳥なおいしい手法でもあります。
ステレオ感が強く、ふわふわした締まりの無いパートやミックスや使ってみてください。
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まとめ
以上コンプの上達のためのコツをご説明させていただきました。
最後に、もしハードウェアのコンプを使ったことがないという方がおられましたら、機会があればぜひ使ってみることをお勧めします。もしそれがヴィンテージであれば絶対に使ってみるべきです。
クリアで滑らかで、かなり無茶な突っ込みをしても劣化せず、そのクオリティが損なわれない。小さな音量でもパンチと存在感を維持し続ける。という雑誌でよくある評価は、決して誇張ではありません。
DBX 1066 や ALESIS 3630 のようなコモディティコンプでも、 DAW 内部の陳腐化したプロセスに放り込むと明らかに空気感の異なる個性を演出してくれるでしょう。
お試しください。